これが僕の愛だ1

「こちらが、沢口みのりちゃんです」
さとるが、目の前にいる男の人に向かってわたしを紹介した。
海辺のカフェで別々に待ち合わせ、つい先ほどテーブルを囲んだばかりの三人。
緊張感からか、わたしは少しふわふわしながら、その場の空気を感じていた。
わたしとさとるは大学の同級生で、卒業してからも馬が合い、時々一緒に呑みにいく友だちだ。
わたしと初対面の男の人は、さとるの中学時代からの友だちで、幼なじみだと聞いていた。
「で、こっちが、有馬もといくん」
「もとい?」
さとるが彼を紹介してくれたとき、めずらしい名前だと感じ、思わず聞き返してしまった。
「うん。基本の基って書いて、もといって読むんだ」
さとるが空中に字を書いて説明する。
「へえ。初めて聞く名前だなあ」
わたしが他愛ない感想をいうと、
「「基」って、「墓」っていう字に似てるでしょ」
もといくんは、真顔ですこし不気味なことを言った。
「そ、そう……だね」
「時々、書き間違えるんだよね。なんか憑いてるのかもな」
基くんてきれいな顔をしているけど、ちょっと少し変わった人かもしれないと思った。
「もとくん。みのちゃん、怖い話ダメだから」
さとるが基くんに言った。その呼び方が子どもっぽくて、いかにも幼なじみという感じがかわいらしい。
「べつに、それくらいなら大丈夫だよ」
「なに言ってんの。サークルの合宿のとき、夜の怖い話大会で、みのちゃんガマンできなくて逃げ出して、捕まった時に大声あげて気絶したじゃない」
「あれは気絶じゃないよ! 眠くなったから部屋に戻ろうと思って、そのまま廊下で寝ちゃったんだよ」
「派手な就寝の仕方だね。毎晩そうなら、困るかも」
基くんは顔色を変えずにそう言うと、コーヒーのカップに口をつけた。

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これが僕の愛だ2

基くんの落ち着いた様子をじっと観察したあと、わたしはさとるに視線を送った。
お互いに、目と目で会話をする。
(ちょっとさとる。どうしてわたしに、この人を紹介しようと思ったのよ?)
(だって、結婚したいしたいしたい! って、会うたびにわめいてたじゃないか)
基くんは、さとるがわたしに連れてきたお見合いの相手だった。
友だちの紹介というごく平凡な出会いでさえも、つてというつてを使いきり、コンパもお見合いパーティも行きつくしたわたしには貴重な出会いの機会だった。
そもそも、さとるがわたしに男の人を紹介してくれるのなんて、長い付き合いだけど初めてだ。
わたしの女友達をさとるに紹介したことはあるけれど、サークル以外でさとるの男友達といっしょに遊んだこともない。
お酒の席とはいえ、あまりにもわたしがしつこく絡むので、
「じゃあ、ぼくの親友を紹介する」
と、5杯目のビールで真っ赤になった顔をゆがめ、さとるが言った。
後日、さとるからの電話で、
「いろいろ考えたけど、お見合いの場所は海の近くの喫茶店にする。他に何もなくて、話しかできないところがいいと思うんだ」
と聞かされた。
さとるはまじめなので、お見合いについていろいろと考えてくれたらしい。
とりあえず、わたしは先にお互いの写真やプロフィールを交換したいと言ったところ、さとるは断固断った。
「みのちゃん、なに言ってんの? 出会いはスローモーションなんだよ」
あんたこそなに言ってんのと言い返したけれど、さとるは「大丈夫だ、責任持つから!」と言って譲らなかった。
なので、基くんとわたしは、お見合いといえども名前も聞かされず、完全に初対面だった。

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これが僕の愛だ3

「えっと、じゃあまず、自己紹介しようか」
ふと気がつくと、さとるはわたしに視線を送っている。
「えっ。わたしから?」
「うん、みのちゃんからどうぞ」
「え、えっと。沢口みのり、27歳です。OL4年目……です。一人暮らししています。おうし座のA型です……。ハ、ハムスターを5匹飼ってます」
「増えたの?」
「え? な、何が? 年収? それが全然……」
「何言ってんの。ハムスターのことだよ、みのちゃん」
「あ、ああ。ハムね。うん、最初は一匹だったんだけど」
「メス? 妊娠してたのか」
基くんがハムスターの話題に食いついてきた。何に興味がある人なのか、まったく読めない。
「そうみたい。朝起きたら生まれてたから、すごくびっくりした」
わたしがそう言うと、さとるが口をはさんできた。
「その日、朝の6時にみのちゃんから電話かかってきたんだ。ハムスターは雌雄同体なの!? って」
「ちがうよな」
「ちがうよ」
「気が動転してたんだってば……」
わたしが照れ隠しにうつむくと、
「いいね。かわいい」
そう言いながら、基くんがきれいに目を細めたので少しドキッとした。
わたしは、小声でさとるに問いかけた。
「(かわいいって、わたしのこと?)」
「……ハムスターのことだと思うけど」
もう基くんは、もとの無表情に戻っている。
この人、ハムスターとわたし、どちらに興味があるのだろうか……。
「もとくんも、自己紹介してよ」
「……有馬基、28歳。うお座AB型。仕事は外交官」
「はあ? 外交官!?」
思わず声が高くなってしまい、店内を見回すと、カウンターにいた女の人と目があった。
「そうだよ。もとくん、外務省で働いてるから。この前まで外国に行ってたよね」
「うん」
「ど、どこの国……?」
「韓国」
「か、韓国って、あの有名な韓国!?」
すでにわたしは、自分でも何を言ってるのかわからない。

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これが僕の愛だ4

身近にいない種類の仕事を聞いただけで、自分を見失ってしまいそうになるなんて。我ながら、小市民すぎて情けない。
「俺はノンキャリアだから。別にそんなすごくない」
基くんは平然と言った。
「充分すごいよ。もとくんは、英語も韓国語も広東語もフランス語もドイツ語もスペイン語もエスペラント語もぺらぺらなんだ」
「な、なにそれ……。そんなにたくさん言葉を覚えても、口はひとつしかないのに……?」
あいかわらず我を見失っているわたしの失言に、基くんは目を見開きぱちくりさせたあと、少し笑って言った。
「言えてる」
基くんは気を悪くすることもなく、淡々とわたしに質問した。
「外交官と結婚すると、海外に長期赴任もあるんだけど。みのりちゃんは大丈夫?」
「はい?」
突然そんなお見合いっぽいことを聞かれても、到底頭が着いていかない。
すると、さとるが息急ききったように言った。
「み、みのちゃんは海外はムリだよ。日本語もちゃんとしゃべれないし、英語の必修も三回落としたんだ」
「ちょっと、さとる! お見合い相手に恥をさらすことないじゃない!」
「なに言ってんの? みのちゃん。結婚は見栄でするもんじゃないよ」
「そんなのわかってる! けど、こう、お互いを徐々に知っていくっていうか、物事には順序が……」
「そんな時間ないって言ってたじゃん。もう誰でもいいから、会ったその日に結婚したい、楽になりたいって」
「酔っぱらいの言うこと、いちいち間にうけないでくれる?!」
「……だったら、俺に紹介してなんて言うなよ」
突然、さとるが真剣な目をして言った。

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これが僕の愛だ5

「みのちゃん。俺がどんな気持ちで二人を合わせたのかわかってるの?」
「どんなって……」
「俺は夕べ、二人の結婚式でしゃべるスピーチ考えてて眠れなかった。思い出がありすぎて、何から話していいかわからない。とても3分じゃまとめられないよ」
「ちょっと、いくらなんでもそれは気が早すぎで……」
「なんで? 俺が好きな二人が出会って、うまくいかないわけがないだろ」
「そ、そんなわけないじゃん! 人にはフィーリングというものが」
今日のさとるはちょっとおかしい。明らかに考えすぎだし、延々と語り続けている最中も、目が血走っている。
「おかしいよ。いくらお見合いだからって、なんでそんなに思い込んでるの?」
わたしがきつめに言っても、さとるはちっとも引かなかった。
「俺は、二人を会わせる時には覚悟がいるって思ってた。もとくんはこの通りかっこいいし、みのちゃんはとてつもなく可愛いんだから、二人は会ったその足で役場に行ってしまうと思った」
「なにその謎の思い込み! こわいこわい、さとるこわい!」
「こわかったのはこっちなんだけど!?」
「なんでキレられてんの? あたし!」
「もういい。あとは若い二人にまかせて、ぼくは海を見に行く! どうぞ末永くお幸せにぃーー!」
さとるは勢いよく立ち上がると、そう言い捨てて、小走りに店を出て行ってしまった。
砂浜に面したこの店の窓からは、さとるが海へ向かってかけていく後ろ姿が見える。
わたしが半ば呆然としながらその姿を見つめていると、ずっと黙っていた基くんが低い声で言った。

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これが僕の愛だ6

「みのりちゃん。ごらんの通り、さとるがみのちゃんのことずっと好きだったの、気づいてなかった?」
「……そうかなと思った時期もあったけど、すぐ忘れたよ」
わたしは力なく答える。
「ひどいよね。女の子のそういうところ、ほんとひどいと思う」
そう言いながら、基くんはちいさくため息をついた。
「……でも、さとるだって根性なさすぎるよ」
チャンスは何度でもあったのにそれを生かさなかったのは、好きだったほうが悪い。
「わたしが結婚したいって叫んだとき、「じゃあ、ぼくが」って言い出さないのは、自信がないからでしょう。そういう自信がない人のところへは、行けないよ……」
「でも、さとるにとっていちばん自信があって、確かなものを君に差し出したじゃない」
「なにそれ?」
「俺」
自信満々にそう言いきった基くんに、わたしは何も言えなかった。
「それが、みのりちゃんへのさとるの愛だったんだろ」
「……その愛は、素直にわたしに届いてくれるわけ?」
「それが。正直、あれを目の当たりにすると」
「うん」
「今のところ、君への興味だけでは、太刀打ちできない感じだ」
「……やっぱりね」
これまでの基くんの反応をみていて、薄々そうじゃないかと思っていた。
「一応、あいつ親友だし。君を気にいってないわけじゃないんだけど」
この年になっても、男の人からこんな風に自分を評価されるのは、胸がちくちく痛んだ。
それは、長年の友人であるさとるへの遠慮だけではなくて。
ひと目で夢中にさせられない、わたしの女としての魅力の不足。
わかってる。こんなの拗ねているだけ。
でも、基くんのことを、ちょっと良いなと思ってたんだもの。だから、やっぱり少し情けないし、悔しい。
そのまま、悔しまぎれに言った。

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これが僕の愛だ7

「わたしを気に入ってる? そうは見えないけど」
「そうかな」
「そうよ」
「男わかってないね。もっと素振りしたら」
「素振り?」
「素振りしてなきゃ、本番でホームラン打つの無理だから」
「……めんどうだなあ」
「ほんとにね」
ふたりで話をするうちに、少しずつ緊張がほぐれてきた。
そのせいか、わたしは基くんの前でふうと息をつき、姿勢をくずして言った。
「……さとるがもう少し背が高くて、お給料もよくて、服のセンスがよくて、長男じゃなくて、わたし好みの薄い顔で、思いこみ怖すぎ勘違い野郎じゃなかったら、わたしも結婚を考えるのにな」
さとるの親友の前で最低なことを言うと、基くんはあいかわらず気を悪くした様子もなく、くっくと愉快そうに笑った。
「それじゃ、まるっきり別人」
「だよね……」
私は頬杖をついて、遠くの浜辺を見つめる。
夕焼けの海に光が反射して、まぶしい。
さとるが、この場所、この時刻をお見合いの場に選んだ理由が、わかるような気がした。
この景色は、新しい出会いも、ときめきも、切ない片思いも、まぬけな過去も、美男美女ではないわたしたちのありふれた恋模様も、すべてを包み込んでくれる。
わたし自身を、わたしの人生の主役にさせてくれる。
砂山をつくったさとるは、トンネルを貫通させて喜んでいた。
そのとき、散歩中の犬が通りかかり、さとるに飛びつく。
尻餅をついた拍子に、寄せた波でおしりがびしょ濡れになっていた。
「あーあ……」
残念なさとるの姿を見てつぶやいた声に、基くんが反応して言った。
「ああいうのって、女子の母性本能くすぐられない? なんか憎めなくてかわいいじゃん、あいつ」
「全然……。わたしがさとるを好きなところって、そういうところじゃないの」

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どんぐりコロコロ

「あはははは! ぴんくちゃーん。もっと押してえ~~~~」
ブランコに乗って背中を押されながら、サトがごきげんで大声を出した。
「ちょっとサトちゃん! 次はぴんくの番だって言ったじゃん!」
ぴんくは唇をとがらせながらも、ブランコの後ろからサトの小さな背中を一生懸命押し続けている。
「もーちょっと~。だってぴんくちゃんが負けたんだもーん」
「サトちゃんがいろ鬼で「セロリアンブルー」とか言うからじゃん! そんなの公園の中にないよっ」
ずるいずるいっと言って、納得のいかないぴんくは先ほどからずっとごねている。
ふたりでいろ鬼をして遊び、負けた方はこうしてブランコを押してあげる約束になっていた。
ようやく満足したサトが、「明日へじゃーんぷ!」と言ってブランコを飛び降りたとき、空になったブランコのイスが反動でぴんく目がけて返ってきた。
「きゃー!」
ぴんくは急いで逃げたので、危機一髪でブランコへぶつからずにすんだ。
「もおっ! 危ないじゃん! サトちゃんはやることなすこと全部がおおざっぱなんだよっ」
サトとぴんくはいとこ同士なので、気心も知れている分お互いに対して言いたいことを言い合う兄弟のような関係だ。なので、友達同士としてはいくぶん遠慮がなかった。
「えっ? おおざっぱって、なあに?」
ぴんくの言葉を聞いて振り向いたサトは、スカートの汚れを掃いながら聞いた。
「お、おおざっぱっていうのは……」
自分で言ったはずなのに、ぴんくは答えに迷っていた。お互い小学一年生なので、言葉は知っていてもうまく説明まではできない。
「おおざっぱっていうのは……、そう、サトちゃんのママのお料理に入ってる野菜みたいな感じだよ」
ぴんくは自分のママが言っていたことを思い出して、そのまま説明してみた。
「ああ~うちのお母さん、野菜もお肉も切らないからねー」
サトの家では、食べ物はなんでも丸ごと食べるのが主流だった。
業務用のブロック肉が出てきたり、キャベツを一玉まるごとロールキャベツにしたりと、すべてのサイズが大きい。
「あれが『おおざっぱ』って言うのかあ。ひとつかしこくなったよ」 と言って、サトは喜んだ。

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これが僕の愛だ8

「へえ。じゃあ、どういうところが好きで、あいつと長年付き合ってるの?」
基くんに聞かれて、少し考えてみた。わたしが思う、さとるのいいところは。
「ぜったい、わたしのこと適当に扱わないところかな」
へえ……と、基くんが興味深そうに相槌をうつ。
「どんなにケンカっぽい雰囲気になってもね、さとるはわたしのこと、みのちゃんって呼ぶの。お前とかてめえとか、一回も言われたことない」
「あいつらしいね」
基くんの声が、やわらかく響いた。
「それに、なにをするにもわたしの順番を先にする。さとるのそういうところ、たまにお母さんみたいって思うんだ」
「……みのりちゃん、けっこう甘やかされて育ったんだね。意外とお嬢さんなんだ」
「お金持ちじゃないけど、大事に育てられたお嬢さんだよ。小学生の頃もね、乱暴しない男の子がすきだった。ねえ、こういうなんでもない話するのって、楽しいね」
「うん。楽しい」
浜辺では、犬の飼い主がぺこぺこと謝り、さとるは笑って手を振っている。
砂まみれの上にパンツまでびしょ濡れだろうに、どうやって帰るつもりだろう。
「俺、車で来てるから大丈夫だよ」
わたしの心を読んだように、基くんが言った。
くそ。やっぱりかっこいい。
親友同志、男二人の間で揺れる乙女心を想像してみても、どうしてもドラマ化の声はかかりそうにない現実の現実たる感覚。
わたしはちょっと素敵なこの人に好かれる気がしないし、長年の友人のさとるを好きになれる気もしない。
そしてまた、ひたすら素振りを続ける日々の中で、静かに動いていく自分の心を見つめていくしかないのだと思い知る。
ちくしょう。負けるもんかー。
遠くの砂浜で、とうに開き直ったのか、地球に寝転ぶさとるのはねた茶色い髪をにらみ、冷めた紅茶をがぶ飲みした。

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どんぐりコロコロ2

「ねえ、もういろ鬼はやめようよ。飽きたちゃったよ」
ぴんくは不当に負けるのを嫌がって、サトをちがう遊びに誘うことにした。
「そうだなあ。じゃあ、お人形遊びするー?」
サトはそう言って、ふところから百円均一のお店で買った大事なお友達、ルルちゃん人形を取り出した。
「えっ、ルルちゃん、そこにいたの?」
ぴんくは驚いて目を丸くした。まさか服の中から人形が出てくるとは思わなかったようだった。
「そうだよ。ルルちゃんはいつも一緒だもん」
「結構走ったりしたのに。よく落ちなかったね」
「ルルちゃんて、肌にくっつくの。体がのっぺりしてるから」
関節が曲がらないルルちゃん人形は、つるつるとしたソフトビニールなさわり心地だった。
「ほんとだね。ルルちゃん、すごいなあ!」
ぴんくはルルちゃんの肌触りに関心したけれど、自分はお人形を公園に持ってきていないことを思い出した。
「でも、ぴんくは自分のお人形持ってきてないし……」
「じゃあ、家に帰って取ってきなよ」
「やだよ! お人形遊びはまた今度おうちでやろうよ。おやつでも食べながらさ」
「あ、そうだね~。おやつがいるよね!」
そう言われるとサトもあっさり折れて、サトとぴんくとルルちゃんの3人は、「ちょっと休憩~」と言いながら遊具の脇にあった木のベンチに腰かけた。
「あれ? そういえばルルちゃん、お洋服の柄が変わった?」
ファッションに敏感なぴんくが気がついて、サトに聞いた。
「わかった? お揃いなんだよ、私のバンダナと!」
よく見ると、サトが首元に巻いている赤と茶色のタータンチェックのバンダナと、ルルちゃんの新しいワンピースの柄は同じものだった。
「これ、お母さんが上履き入れを作ってくれたとき、余った布で一緒に縫ってくれたの~。かわいいでしょ?」
サトはぴんくに向かってルルちゃん人形を掲げ、得意げに言った。
ぴんくも素直に頷いて、ルルちゃんの固い髪の毛を撫でながら言った。
「うんうん。かわいいねー。よかったね、ルルちゃん。ぞうきんみたいな服をやっと脱げたね」
「あれはぞうきんじゃないよ! タオル地だよ!」
「あのぞうきんは捨てたの?」
「私の引き出しに入れてるよ!」
サトはぷんぷん怒りながら、ぴんくからルルちゃんを取り返した。

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